SAFETY, TECHNIQUE & TRAINING
海・プール・水槽での日焼け止め
肌の保護と水中環境への配慮を両立するために
水に入る人にとって、紫外線から肌を守ることと、水質や水生生物へ配慮することは二者択一ではありません。表示だけで「安全な一本」を決めるのではなく、利用場所の規則、衣類、日陰、活動時間、製品の使い方まで含めて考えます。
01 / ROUTES INTO WATER
日焼け止めはどのように水中へ入るのか
肌に塗った日焼け止めは、海やプールへ入った瞬間だけに水中へ移るわけではありません。入水、発汗、タオルや衣類との摩擦、シャワー、洗顔、入浴などを通じて肌から離れ、直接または排水を経由して水環境へ移る可能性があります。
耐水性の高い製品でも、「肌からまったく移らない」という意味ではありません。耐水性表示は、定められた水浴試験後に紫外線防御効果がどの程度維持されるかを示すものであり、成分の流出量や環境安全性を保証する表示ではないからです。
02 / READING THE RESEARCH
海洋環境への影響が研究されている成分
紫外線防御に使われる成分には、オキシベンゾン、オクチノキサート、オクトクリレンなどの有機系UVフィルターや、酸化亜鉛、酸化チタンなどがあります。これらについて、水・底質・水生生物からの検出、分解や蓄積、生物への影響などが研究されています。
ただし、ここでは二つを分けて読む必要があります。
ハザード
ある成分が、特定の濃度や条件の実験で生物へどのような影響を与え得るか。
実環境でのリスク
実際の海域などで、生物がどの濃度にどれほど曝露され、影響が起こる可能性があるか。
実験で影響が観察されたことだけで、通常の使用がそのまま特定の環境被害を起こすと断定はできません。一方で、知見が未確定だから配慮が不要ともいえません。成分、濃度、水温、水の滞留、対象生物、複数物質の組み合わせなどによって結果が変わるためです。
酸化亜鉛や酸化チタンについても、粒子径、表面処理、水中での凝集・沈降・溶解などを含めて研究が続いています。「紫外線吸収剤は悪い/散乱剤なら安全」という二分法では、製品全体や実環境での影響を適切に判断できません。
03 / ENVIRONMENTAL CLAIMS
「オーシャンフレンドリー」「リーフセーフ」表示の限界
環境配慮を示す言葉は、製品選びの手掛かりにはなります。しかし、表示だけを見て「海に絶対安全」「サンゴやすべての水生生物に無害」と判断することはできません。
こうした表示は、メーカー独自の基準、特定成分を除外した処方、耐水性の工夫など、製品ごとに意味が異なる場合があります。確認するときは、言葉そのものではなく、メーカーが何を根拠にその表示を用いているかまで確認します。
たとえば、この記事で紹介するアネッサの「オーシャンフレンドリー処方」はメーカーによる表示です。本記事では第三者認証や、あらゆる環境への無害性の保証として扱いません。
04 / INGREDIENT LABELS
成分表示を見るときのポイント
日本の化粧品は原則として全成分表示が行われます。成分表から、どの成分が配合されているかを確認できますが、完成品として水中でどの程度流出するか、実際の海域でどの程度の影響があるかまでは分かりません。
- 購入時点の容器とメーカー公式ページで、現行の全成分を確認する。
- 旧製品、海外版、リニューアル前後の処方を混同しない。
- 一つの成分名だけで、製品全体の安全性や危険性を決めつけない。
- 環境配慮表示がある場合は、その基準や説明の範囲を確認する。
- 肌に異常が出た場合は使用を中止し、必要に応じて医療機関へ相談する。
05 / SUN PROTECTION
水中活動で必要な紫外線対策
環境への配慮を理由に、必要な紫外線対策をやめることは適切ではありません。水辺では水面や周囲からの反射もあり、待機中や水面付近で紫外線を受けます。日焼け止めを使う場合も、製品だけに頼らず複数の方法を組み合わせます。
覆う
ラッシュガード、ローブ、帽子、タオル、UV対策衣類を使う。
避ける
日陰で待機し、直射日光を受ける時間や時間帯を調整する。
正しく使う
表示された使用量・塗り方・塗り直し・落とし方を守る。
SPF・PA・UV耐水性の意味
- SPF:主にUVBに対する防御効果の指標。
- PA:UVAに対する防御効果の指標。
- UV耐水性:規定の水浴試験後に紫外線防御効果が維持される程度。★は40分、★★は80分の試験に対応します。
いずれも、環境への影響がないことや、長時間まったく塗り直さなくてよいことを示すものではありません。
06 / PLACE-SPECIFIC RULES
海・通常のプールで確認すること
海で使うとき
国、自治体、海洋保護区、ビーチ、ツアー事業者によって、成分や製品の持込み・販売・使用に関する規則が異なる場合があります。旅行前と入水前に、現地の最新情報を確認してください。
ハワイ州では2021年1月1日から、処方箋なしでオキシベンゾンまたはオクチノキサートを含む日焼け止めの州内での販売・販売目的の流通が禁止されています。これは州全体での一律の「使用禁止」と同じではなく、場所ごとの規則は別に確認が必要です。
通常のプールで使うとき
日焼け止めを許可する施設、入水前のシャワーを求める施設、使用できる製品や量に独自ルールがある施設など、運用はさまざまです。屋内・屋外にかかわらず、掲示や利用規約を確認し、不明な場合は施設へ問い合わせます。
「耐水性があるから問題ない」「屋外プールだから自由に使える」と自己判断せず、水質管理と他の利用者への配慮を含めて施設の指示を優先します。
07 / VANESSA'S PRACTICE
Vanessaの実際の日焼け止めの使い分け
掲載している2製品はいずれもVanessa本人が自費で購入したものです。提供・広告・アフィリエイトによる掲載ではありません。以下はVanessa個人の使用経験であり、すべての人に同じ使用感や結果を保証するものではありません。
普段の外出
SKIN1004
マダガスカル センテラ ヒアルーシカ ウォーターフィット UV セラム
最初に手に取ったきっかけは、正直にいえばパッケージのデザインでした。ただ、実際に使ってみると成分面にも納得でき、使用感もVanessaの肌に合っていたため、普段使いを続けています。
よく伸びる軽めのテクスチャーで、Vanessaの場合は白浮きも気になりません。軽さがありながら保湿感はしっかりしていますが、肌質や好みによっては、ややべたつくと感じる人もいるかもしれません。
Vanessaはこの製品を普段使い用としており、海やプールなどの水中活動には使用していません。これはメーカーによる水中使用禁止を意味するものではなく、本人の使い分けです。
海・通常のプール・水中練習
アネッサ
パーフェクトUV スキンケアミルク NA
アネッサを選んでいる理由は、長年使われてきた製品としての信頼感と実績です。現行の公式表示はSPF50+・PA++++、UV耐水性★★です。
Vanessaが海やプールで使用した範囲では、入水中に落ちている感覚はほとんどなく、もはや水をはじいていると感じるほどの撥水感があります。塗り心地にも不満はありません。一方で、使用後に落とすのは少し大変だと感じています。
Vanessaは顔にはオイルクレンジング、身体にはドクターブロナーを使用しています。ただし、これは本人の方法です。製品公式では「せっけんで落とせる」と案内されているため、肌質、塗布量、重ねた化粧品などに応じて、メーカーの使用方法を確認してください。
メーカーは「オーシャンフレンドリー処方」と表示していますが、本記事では海洋環境やすべての水生生物への無害性を証明するものとしては扱いません。
08 / AQUARIUM SHOW PRACTICE
マーメイドショー当日の運用
Vanessaは、日焼け止めを塗った状態では水槽や飼育プールへ入水しません。
日焼け止めを使用するのは、その日のショーとすべての入水が終了し、もう水へ入らないことが確定してからです。ショーが一度終わっていても、再入水の可能性が残っている間は使用しません。
これはVanessa本人の現場運用であり、すべての水族館や出演者に共通する法的義務として示すものではありません。施設や主催者から、日焼け止め、化粧品、整髪料などに関する指示がある場合は、その指示を最優先します。
入水前の日焼け対策をしないわけではありません。日陰での待機、ローブや衣類、タオルで肌を覆うこと、直射日光に当たる時間を短くすることを優先します。
マーメイドは水槽の主ではなく、
水槽へお邪魔する存在。
水槽や飼育プールは、マーメイドのためだけに用意された水ではありません。魚、アシカ、イルカなど、その環境で暮らす生き物がいます。演者は、その場所へ一時的に入らせてもらう立場です。
出演者が持ち込む日焼け止めや化粧品などの成分が、水質、生き物、ろ過設備へどう影響するかを、出演者側で完全に予測することはできません。万一の問題は簡単に責任を取れるものではなく、施設との信頼を損なえば、Vanessa個人だけでなく、今後のマーメイドショーや水中演出の機会にも影響し得ます。
だからこそMermaid Labでは、見た目や演出上の都合よりも、水質、飼育生物、施設との信頼を優先します。
09 / PRACTICAL BALANCE
肌の保護と環境への配慮をどう両立するか
必要なのは、すべての場所で使える「完璧な一本」を探すことではありません。どこへ入るのか、どのような生き物や設備があるのか、施設は何を求めているのか、自分の肌をどう守るのかを整理し、行動全体で負担を減らすことです。
日焼け止めを使う場所では、現行表示と施設ルールを確認して適切に使用する。使用を控える必要がある場所では、衣類、日陰、待機時間の調整で肌を守る。分からないときは、入水前に施設や主催者へ確認する。この積み重ねが、肌と水中環境の両方を大切にする現実的な方法です。
10 / BEFORE ENTERING
入水前チェックリスト
- 入る場所は、海・通常のプール・飼育水槽のどれか
- 施設、海域、ツアー、主催者の最新ルールを確認したか
- 製品名、現行処方、SPF、PA、UV耐水性を公式情報で確認したか
- 表示された使用量、塗り直し、落とし方を確認したか
- ラッシュガード、ローブ、帽子、タオルを使えるか
- 日陰で待機し、直射日光の時間を短くできるか
- 肌荒れ、傷、発疹など、現在の肌状態に問題はないか
- 飼育水槽では、化粧品・整髪料を含む持込み条件を確認したか
- 不明点を入水前に施設・主催者へ質問したか
注意事項
本記事は、日焼け止めの使用、水中活動、環境配慮に関する一般情報と、Vanessa本人の経験・Mermaid Labの実践方針を整理したものです。医療上の診断や治療、個別製品の安全性評価、施設の正式規則に代わるものではありません。
肌の異常や紫外線に関する不安がある場合は医療機関へ相談してください。水中活動では、施設・主催者・海域の規則、安全管理者やインストラクターの指示を優先してください。製品の処方、名称、表示、法規制は変更される可能性があるため、購入時・利用時の公式情報を確認してください。
研究対象となっている成分についても、研究条件と実際の環境リスクは同一ではありません。本記事は特定の商品や成分を「完全に安全」「危険」と断定するものではありません。
REFERENCES
主な確認資料
- 米国環境保護庁(EPA)|UV Filters in Sunscreens and Aquatic Environmental Health
- National Academies|Review of Fate, Exposure, and Effects of Sunscreens in Aquatic Environments
- 日本化粧品工業会|UV耐水性表示に関する資料
- 資生堂|アネッサ パーフェクトUV スキンケアミルク NA
- SKIN1004日本公式|ウォーターフィット UV セラム
情報確認日:2026年7月27日
監修・実践例:Vanessa Diva(Mermaid Lab主宰)
編集:Mermaid Lab
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